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勝手に最遊記

勝手に最遊記

HAPPY BIRTHDAY!―2

八戒に連れ出されるまま、宿の裏手へと出てきた桃花。
取り敢えず黒いオーラーは漂っていないのだが、八戒が相手になると気が抜けない。

『優しい時は、すんごい優しいんだけどなぁ・・。』
普段は笑顔の似合う好青年。その言葉使いや振る舞いから、相手に嫌な印象を与える事など皆無である。


しかし、いったん怒らせたら―――――――――・・・・いや、怒らせるまでには至らなくても。

にっこり笑いながら、傷口を開いて塩を塗り混むような鮮やかな毒舌。素晴らしい笑顔を作りながら、目が笑っていないその表情。
鋭すぎる頭脳を回転させ、人の揚げ足を取り巻くり、罠にはめて楽しむ確信犯――――――――

無論、それらの行動を八戒が起こすことは殆ど無い。黒いオーラーで威嚇された時点で、姿勢を正す。
それが生き抜く術だと、悟空と悟浄が真剣に言っていた。


『あたしは滅多に怒られないんだけど・・・・。』


“八戒は桃花に甘い” その二人が不服そうに訴えているのも、しばしばだ。『・・・でも。』


ごく、まれに。
内情を知らない人間(主に不埒な輩)が八戒の逆鱗に触れて・・・・・・・再起不能にされるのを垣間見ると、


『絶対に八戒ちゃんは怒らせたくない・・・。』三蔵よりも、誰よりも。

「・・・桃花?何か言いました?」 ハッと気付いた時には、しっかり八戒に顔を覗き込まれていた。
「・・・な、なんでも・・・。」慌てて笑顔を繕うが、八戒相手にそれが通用するかどうか。

案の定、訝しげに翡翠の眼を細めた八戒に、ゾクリと背筋に悪寒が走ったのだが―――「まぁ、良いです。話があると言ったのは・・。」


その“話”を切り出されて、桃花が『助かった!』・・・と思ったのは・・・・その一瞬のみであった。


―――――――――――――――――30分後。


「・・・・遅いなぁ。」 ポツリ、と。悟空が呟いた。

「あ?・・・そうだな・・説教喰らってるにしちゃぁ、長ぇよな。」チラッと悟浄が時計の時間を確認する。
「ま、大丈夫なんじゃねぇ?八戒は桃花に甘いから・・・。」まさか半殺しにするほど怒る訳じゃねぇだろうし。
そう言いつつも、ベッドから起き上がった悟浄。扉の方へ気配を伺ってみる。

「そうだけどさ・・・過保護だから、余計に腹が立つって事もあるかも・・・。」

そわそわと立ち上がった悟空。

「俺らだって騒いでた訳だしさ。桃花一人、怒られるんじゃぁ・・・。」

余計な事をするな、と。三蔵が口を開こうとした瞬間――――――「ただいまぁ。」
ガチャッと。桃花と八戒が帰って来た。


「あ、桃花。」 ホッとした悟空。桃花と八戒の様子を見る限り、いつもと変わらずに穏やかな雰囲気・・・だったのだが。

「うふふ。ちょっと心配させちゃったのかしら?」


――――――――――うふふ?うふふですカ?


小首を傾げ、右手を軽く顎にかけている。その右斜め45度の角度からニッコリ微笑む様は、少女漫画の主人公のようで気味が悪い。
しかも何気にピンクのオーラーが出ているのは気の所為だろうか?いや、そう思いたい。

悟空が見回せば、悟浄はハイライトを銜えたまま固まり(口は半開きだ)三蔵に至ってはビシッビシッと怒りマークが出ている。

「八戒ちゃんと買い出しに行って来るわね。カードを貸してくれる?」ね?と。逆サイドに小首を傾げ三蔵に手を差し出したのだが、


パシッとその手を三蔵が叩いた。
「・・てめぇ。なんの冗談だ・・・・・。」眉間に皺を寄せ、ギッと桃花を睨み付けた。

いつもなら「ナニよ!大体、三蔵が買い出しに行くわけ?行かないクセに出し惜しみしてんじゃないわよっ!」
そう怒りだして二人の言い争いが始まるのだが・・・・「・・・ひどい・・・。」


「ひどいわ、三蔵。あたしが・・・どうして・・・。」涙目になって俯く桃花。肩まで震わせて、到底、芝居とは思えない。

「わっ!わっ!桃花、泣くなよ!!」焦った悟空がそばに駆け寄る。「な?三蔵の言った事なんて気にすんなよ!」
「・・・アリガトウ悟空ちゃん・・・・優しいのね。」グスッと鼻を啜りながら悟空を見つめた。

――――――――二人の間に流れる、甘い雰囲気・・・・・・・・【スッパアアンッ】


「痛っってええぇ!!三蔵、俺が何したって・・「・・・・八戒!貴様、コイツに何を吹き込んだ!!」

騒ぐ悟空を後目に、八戒を睨み付けた三蔵。

「あれ。気に入りませんか?」クスッと笑みを零して、「三蔵だって女らしくって言ってたじゃないですか。」

「・・っ・・貴様、なに・・・」もしや八戒を装った刺客だろうか?いや、この場合は桃花が刺客なのか?
訳の分からない焦燥感で、三蔵の言葉が詰まった。


「は、八戒。お前さ、桃花をどうしたワケ?」やっと悟浄が口を開く。どう様子を見ても桃花が芝居をしているとは思えない。

「イヤだなぁ、悟浄まで。僕をなんだと思ってるんですか?」心外だなぁ、と。首を振って。




「ちょっと暗示をかけただけですよ。」   のほほんと。  言ってのけた。


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